その女アレックス
イギリス推理作家協会賞受賞の海外ミステリ。
作者はフランス人のピエール・ルメートル。
フランス嫌いのイギリスが賞を与えるくらいだからよっぽど面白いのだろうと予想して、購入した記憶がある。
本屋で見かけた、あなたの予想はすべて裏切られる!というコピーに違わぬできであった。
3部構成の長編ミステリであり、第一部では表題のアレックスが誘拐され、監禁されることから事件が始まる。事件を担当するのは誘拐事件にトラウマを持つ刑事カミーユ。*1焦るカミーユたちをしり目に、捜査は一向に進展しない。いたずらに時間は経っていく。そんな中、アレックスは脱出を試みる。第二部でアレックスは脱出に成功。一方、カミーユたちが目にしたのは、もぬけの殻の監禁現場だった。さらに事件は起こる、それは猟奇的な連続殺人であった。やはり事件に翻弄されるカミーユ。そして第三部で物語は一気に収束していく。
邦題が「その女アレックス」となっているだけあって、アレックスのパートになると非常に面白い。反面、カミーユのパートは少々物足りなさを感じる。同僚たちがあまり魅力的ではなく、デブ・金持ち・吝嗇家などのやや強引なキャラ設定がされている。アレックスや彼女に関わる人物は良くも悪くも魅力的であるだけに、ここは少し残念か。
酒はウイスキーをロックでグラスに、肴はなくてよい。
以下に気に入った部分を引用する。
要するにこれがアレックス。これが自分のすべてだ。
人は本当の意味で自分自身に向きあうとき、涙を流さずにはいられない。
アレックスのなかでなにかにひびが入り、そこが崩れてアレックスをのみ込んだ。
鏡のなかの姿はあまりにも強烈で、あまりにも悲しかった。