酒と本

健忘症の備忘録

ひまわりの祝祭

ハードボイルドとミステリーの違いがよくわかってない。

ハードボイルドミステリーって、そのジャンルの中に細分化されて存在しているのだろうか?

 

であるならば、順序によって大まかなジャンルを表しているのかな?

順序を変えると人面魚と魚人くらい違いそうだが。

むむ…そうなると人魚姫のポジションは一体…?

 

ますますよくわからなくなってきたので、ここはひとまずミステリーハードボイルド*1

ということにしておこう。

 

さて、ミステリーハードボイルドな『ひまわりの祝祭』だけれども

藤原伊織のハードボイルド小説は、何度読んでもたまらない面白さがある。

本来、ミステリーは一度読んだら、その結末が裏切られていればいるほど記憶に残り

読み返すことはないのだが、この作者は違う。

結末はわかっていても読み返してしまうのだ。

 

内容はゴッホの「ひまわり」をめぐるミステリーに

数年前に自殺した主人公、秋山の妻がかかわっていて…といった内容。

一応、ミステリーなのでこれ以上は内容を述べないが

一度読んでみて損はない作品である。

 

しかし、何度も読み返したくなる魅力はミステリー小説の部分よりも、ハードボイルド小説の部分だろう。

なんといっても会話の軽妙さが魅力だ。

 

考えてみると、ハードボイルド小説は会話の重要性からみて

マンガ・アニメ・youtube世代と相性が良いのかもしれない。

活字離れを危惧するお偉方は、本を読めと垂れ流すだけではなく

学校教科書に面白いハードボイルド小説を載せてみてはどうだろうか。『山月記』のあとに『新宿鮫』が載っていたら、次にはカフカの『変身』を載せたい。

虎になって、鮫になって、虫になって、次には一体何になるんだ…?

ってワクワクしそうだ。

 

酒はウイスキー、肴は『テロリストのパラソル』にちなんでホットドックで。

 

以下に気に入った部分を引用する。

「君の話した遺書の内容を知っているのはだれとだれなんだ」

「いま現在、仁科、私、あなた、あとひとりいます。家捜しは彼の指示でしょう」

「あとひとりって、だれなんだい」

「あなたは協力を断られた。これ以上、お話しする義務があるでしょうか」

「ないだろうね」

「ずいぶん、あっさりしてらっしゃいますね」

「気分がラクになったからだよ」

彼は僕を見ながら首をふった。何度もふった。

「あなたが無神論者だとは知らなかった。きわめてめずらしい例というしかない」

無神論者?」

「そう。現在にあって神の座にのぼっているのは、なにか。この点はご存知でしょうか」

「知らない」

「カネです。それ以外ない唯一神です。その神をあなたは信じてはいないように見受けられる」

「そりゃ申しわけなかった」

 

*1:⊂は抱合記号。A⊂BならBの中にAが含まれるという意味。犬⊂動物とか電車⊂乗り物って感じの記号。高校数学では部分集合って習うはず。