酒と本

健忘症の備忘録

ダックスフントのワープ

純文学として第9回すばる文学賞を受賞した作品。

藤原伊織の処女作でもある。

 

4本の短編を収録しており、表題となっている「ダックスフントのワープ」は何度も読み返したくなる。

登場人物のマリは「悲劇的な性格」という言葉を「好き」であるという。

この「悲劇的な性格」は藤原伊織作品に見られる傾向であると思う。

「テロリストのパラソル」にしろ、「ひまわりの祝祭」にしろ、である。

勧善懲悪・ハリウッド的なハッピーエンドを求める心境のときには読まないほうがいいだろう。

読むときの酒は洋酒。肴はなくてもよい。

 

短編ごとの好みは以下の順。

ダックスフントのワープ」

「ユーレイ」

「ネズミ焼きの贈りもの」

「ノエル」

 

 ちなみに、この備忘録には酒の話も出てくる。私は酒のみではあるのだが、違いが分からない男である。

日本酒とウイスキーの違いはわかっても、そこからのカテゴライズはできない。

本も、小説と実用書の違いはわかっても、純文学だの大衆小説だのは違いがさっぱりである。

この辺りの区分に関しては非常に適当である。不備があっても私の浅学ゆえのことである。気にしないでいただきたい。

 

最後に気に入った部分を引用する。

「僕はいつも、周りの人たちのバランスを崩してばかりいた。その時は気付かないけど、あとで考えるといつもそうなんだ。だからいま言ったことは全部、ほんというと僕が話す資格のないことばかりだった」

「先生は、距離のことよく考える?」

「考えるよ」

「どこにいたいの」

「引力のそと」